ドビュッシー(1862〜1918)の個人史に触れながら、著者のピアニストとしての個人史にも触れて、実際のピアノ曲の技術解説にまで至るという。伝記+エッセイ+技術指南的一冊です。
ドビュッシーはパリ国立高等音楽院に入っているくらいだからエリートなのですが、エリート中のエリートという感じではなかったようで、異端児だったようです。音楽的にも異端児ですが・・。そういう人が20世紀音楽の先駆けの作曲家になったのは感慨深いですね。
印象派の絵画、象徴派の詩、浮世絵から、エドガー・アランポーのオカルティズムまであらゆる音楽外からの影響関係も盛り込んであります。
指先から感じる
「指先から感じる」という部分は、ショパン-ドビュッシーのピアノの技術的系譜を辿っています。指をのばしたスタイルの奏法です。黒鍵を多く使った調に先に慣れるという、クレメンティ-ショパンのスタイルを継いでいます。
人間の指の長さが、それぞれ均等ではないのだから。すべて均等な〝白鍵だけの調は最も難しい〟。ロ長調 (H dur ・ B major)などを優先すべしとの教えです。
ハ長調からはじめるツェルニーなどのスタイルとは逆方向から入っていきます。
先日、クレメンティを弾いてみたのですが、よく日本ではメインのテキストになっているツェルニーと比べても、ハーモニー的に明らかに複雑(借用和音が多い)。
なるほど、ロマン派や印象派に合うなという感想でした。
私は日本のピアノ教育の典型的な教えを受けました。なので指を曲げるスタイルが身についています。
習っていたピアノの先生ももちろんそうで、小柄な女性なのにめちゃくちゃパワフルなピアノを弾きます。
著者によると、指を曲げるスタイルはベートーヴェンなど古典派の演奏に向いているそうです。
対して高校から習っていた作曲の先生は、あまり指を曲げないスタイルで弾いていました。芸大で学んでいた先生で、フランス音楽の影響も強いので、そういった理由もあるのかもしれません。当時はかなりそういう奏法が不思議に映りました。
いまは多少は色々な調にも慣れて、指先でも両方のスタイルから見ることができるようになりましたね☺︎。