的確に怖い地獄めぐり
原作大岡昇平の作品で。僕は高校の現国で唯一「続きが読みたい」と思ったのがこの人の『レイテ島戦記』だった。
映画化は二度目で、塚本晋也監督・カニバリズムが出てくるって怖そうすぎて映画館でかかってる時は見に行きませんでした。
塚本晋也作品は鉄男をちょっと見たくらいで、あとはNHKのトップランナーとかああいうご本人登場番組で見たくらい。それはとても面白くて、監督本人も面白い人っていう印象が残った。
野火は広告では見ていた。「この組み合わせきたかー。大岡作品好きでも・・怖いから見に行きたくない((((;゚Д゚)))))))」とリアルタイムでは見ず、今年の6月あたりにYouTubeでレンタルで。
やはり怖いっていうか何ていうか・・。戦争末期で明確な敵も見えない演出がなされている。
主人公は結核か何か肺病にかかっているが、救護兵はもっと重篤な人を見ているので
相手にされずフラフラして教会に行き、そこで現地のカップルに出くわし叫ばれて思わず射っちゃう。
そこから地獄が始まる感じで、主人公の主観視点に近くなる。
それで観客も変なトランスというかバッドトリップみたいな状態に入るんだな。
ライムスター宇多丸さんのラジオ。この作品の批評の回で、リスナーから
「マッドマックス フューリーロードのようだ」ってお便りが来てたけど
本当にそうだ。
お互いサイバーパンクを手がけた監督っていう共通点があるし
あんなにスッキリしない、負の・・出口のないマッドマックスという感じがある。
ただいやが上にもこの映画に乗せられてしまう。
主人公は監督が演じているが、これがまたいい感じに頼りない。
で散々な地獄めぐりがあって。(←物凄い端折り方)
終戦後、この小説を書いているらしきシーン。PTSDなのか手を振るわせながら苦悩する主人公の姿・・。この短い映像で充分な深刻さ、押し殺してきた記憶の重さが伝わる
っていう。これは名作。
ぼくは 聞けわだつみの声 とか子供の時見せられたけど。
下手な反戦映画を見せられるより、中学生くらいで見たらよほど効果的なトラウマ映画となりうるでしょう。裸足のゲンの〝ギギギ〟とかああいうやつの方が子供は読むんですよね・・🤔
野火ループさせたら、ルドヴィコ療法ですよ(by時計仕掛けのオレンジ)
よほど戦争イヤだっていう気持ちになります。
このグッチャグチャの描写がないから、山田洋次監督の何だっけ・・会話劇のやつは全然響かなかったんだと改めて思いましたとさ。