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ギターにハマって困って学んで

『手放す生き方』 目覚めた人の言葉

アーチャン・チャー(1918〜1992)はテーラワーダ仏教の老師。この本には彼の語ったこと、教えをまとめたものです。
個人的には、ラリー・ローゼンバーグ『呼吸による癒し』で繰り返し言葉が引用されていたので、この方の名前を知りました。

発行は、仏教関連の書籍を中心に出版しているサンガ文庫。文庫サイズで300頁ほどあるとはいえ、訳も良く読みやすいです。

原始仏教のエッセンスが詰まっている本という感じがしました。自分の心や体の観察をひたすら重ねていく、シンプルな教え、そして修行です。


あるがままの世界
あなたがそれをきちんと観察するとき、私たちの世界は「ただそれだけ」のものとなります。あるがままのものとして、世界が存在するということです。私たちの人生は、はっきりと生老病死によって支配されています。でも、それはただそれだけのことです。偉大とか卑小だとか、いろいろありますが、でもただそれだけのことです。(80頁)
人間というものは常に、この「ただそれだけ」という現実から目を背けるための闘いの渦中にいます。しかし、この現実から逃げ出す代償として、私たちはより多くの苦しみを生み出し続けることになります。(82頁)


無我について

あなたが我を超えて物事を見るとき、もはや幸福に執着することはなくなります。そして、幸福に執着しなくなったとき初めて、あなたは本当の意味で幸福になることができるのです。(265頁)


こういう言葉がいまの自分には響きます。述べられることはとてもシンプルでわかりやすい。このような、仏教や精神世界のカリスマの教えを記録した本は数あれど、突出したわかりやすさのように思います。そして厳しさ…冷徹さドライさがあります。


瞑想に興味がある人にも有用です。具体的なヴィパッサナーやサマタの瞑想についても書かれていますが(第4章)、入門的な本で予備知識があればなお入りやすいと思います。


愛と苦

真の愛とは、智慧のことです。ほとんどの人が愛だと考えているものは、一過性の感情にすぎません。もし、あなたが毎日おいしいものを食べていたとするなら、すぐにそれに飽きてしまうことでしょう。同様に、そのような愛は結局、嫌悪や悲しみに姿を変えてしまうのです。このような俗世間における幸福は執着を伴い、それゆえ泥棒を追いかける警官のように、常に苦(ドゥッカ)と結びついているのです。(114頁)

金言が多いので、いろいろ引用したくなってしまいますが、ブッダの『スッタニパータ』や『ダンマパダ』を抽出したようでいて、さらに実践的にいまの言葉で伝えてくれます。


これは、今後も繰り返し読み込んでいく本になるとおもいます。


手放す生き方(サンガ文庫)

手放す生き方(サンガ文庫)