個人的には、ラリー・ローゼンバーグ『呼吸による癒し』で繰り返し言葉が引用されていたので、この方の名前を知りました。
発行は、仏教関連の書籍を中心に出版しているサンガ文庫。文庫サイズで300頁ほどあるとはいえ、訳も良く読みやすいです。
原始仏教のエッセンスが詰まっている本という感じがしました。自分の心や体の観察をひたすら重ねていく、シンプルな教え、そして修行です。
あるがままの世界
あなたがそれをきちんと観察するとき、私たちの世界は「ただそれだけ」のものとなります。あるがままのものとして、世界が存在するということです。私たちの人生は、はっきりと生老病死によって支配されています。でも、それはただそれだけのことです。偉大とか卑小だとか、いろいろありますが、でもただそれだけのことです。(80頁)
人間というものは常に、この「ただそれだけ」という現実から目を背けるための闘いの渦中にいます。しかし、この現実から逃げ出す代償として、私たちはより多くの苦しみを生み出し続けることになります。(82頁)
無我について
あなたが我を超えて物事を見るとき、もはや幸福に執着することはなくなります。そして、幸福に執着しなくなったとき初めて、あなたは本当の意味で幸福になることができるのです。(265頁)
こういう言葉がいまの自分には響きます。述べられることはとてもシンプルでわかりやすい。このような、仏教や精神世界のカリスマの教えを記録した本は数あれど、突出したわかりやすさのように思います。そして厳しさ…冷徹さドライさがあります。
瞑想に興味がある人にも有用です。具体的なヴィパッサナーやサマタの瞑想についても書かれていますが(第4章)、入門的な本で予備知識があればなお入りやすいと思います。
愛と苦
真の愛とは、智慧のことです。ほとんどの人が愛だと考えているものは、一過性の感情にすぎません。もし、あなたが毎日おいしいものを食べていたとするなら、すぐにそれに飽きてしまうことでしょう。同様に、そのような愛は結局、嫌悪や悲しみに姿を変えてしまうのです。このような俗世間における幸福は執着を伴い、それゆえ泥棒を追いかける警官のように、常に苦(ドゥッカ)と結びついているのです。(114頁)
金言が多いので、いろいろ引用したくなってしまいますが、ブッダの『スッタニパータ』や『ダンマパダ』を抽出したようでいて、さらに実践的にいまの言葉で伝えてくれます。
これは、今後も繰り返し読み込んでいく本になるとおもいます。
- 作者: アーチャン・チャー,星飛雄馬,花輪陽子,花輪俊行
- 出版社/メーカー: サンガ
- 発売日: 2012/09/25
- メディア: 文庫
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