読んでいて辛さがある本でした。
ジェフ・ダイヤー著。
音楽史に残るジャズミュージシャン7人の、半分ドキュメンタリーのような小説。
彼らの個人史に基づいた物語です。
クリント・イーストウッド『Bird』(1988)を連想させる
前にこの『Bird』という映画を見たときに、「ヘロイン中毒 The Movie か!」というようなつっこみをいれた記憶がありますが(笑)
この自己破壊的な描写は、ジャズ史では別に特異なことではない。
イーストウッドはそれをあまりに淡々と映像化したために、僕にはそういう直球の映画に見えてしまったのでした。
それでも音楽は美しい
みな夭折することが多く、40越えられたらラッキーなほどです。
ハードな練習はもちろん、普段の生活は薬物やアルコール依存と、1日何ステージもライブをこなすプレッシャー。
当時の有色人種差別や社会的状況も絡んできます。
例えば、ブログでよくとりあげたビル・エヴァンスは1980年に51歳で亡くなっていますが、彼は当時のジャズミュージシャンの中では長生きです。
この小説の登場人物は、みなボロボロになって麻薬で廃人のようになって死んでいく、苦難と引き換えだろうと、音楽に取り憑かれている。
それでも彼らの奏でる音楽は美しい(バット・ビューティフル)というストーリーになっています。
自分に引きつけて考えると
個人的には読んでいて音楽をやる身として、本当に辛いですね。
自分のように演奏メインでなくとも結構練習もしますし、どんなに小さいライブハウスで演奏しても特に不安の強いぼくはプレッシャーを感じます。
その辺ですごく考えさせられました。音楽家当人にとって何が幸せなのか?ということです。
訳者の村上春樹本人の小説にも時々感じますが、人生の痛みの描写がやはり刺さりますね。
この本を読んで『Bird』もまた見なおしてみようと思ったのでした。